5月の夢の歌 mp3

この土地で新しい生活を始めたのは14年前の春。リンゴの花が満開だった。長野オリンピックも決まる前。のどかな畑の隣にぽつんと建つ小さな新築アパート。道路もない、お店もない…新居の窓から毎日山ばかり見ていた。そのうち仕事をみつけ、忙しくしているうちに、しだいにこの土地の住人になっていった。

言いようのない秋の淋しさ、初めて歩く雪の道。凍った夜の星の美しさ。そして、どんなに長くて辛い冬も必ず終わりが来て、毎年新しい春が訪れる。春が1年の始まりだということを全身で実感した。

雪解け。アスファルトは泥水だらけなのに、行き交う人たちの嬉しそうな顔、スーパーに並んだ春の野菜、そして桜。セーターがいらなくなる頃、今年もまたリンゴの花がいっせいに咲く。

遠い昔の春の記憶は連なって、今の私につながっている。

home